皮膚科専門医に聞く乾癬治療乾癬治療の流れと
患者さんに大切にしてほしいこと

治療を継続するために やりたいことをあきらめない、我慢しない
—“できること”を一緒に考えていく

やりたいことは何ですか?

乾癬では、症状の悪化を防ぐために生活環境の調整が重要となります。「栄養バランスの良い⾷事をとる」「過度な飲酒は控える」「タバコはやめる」「⽪膚に刺激を与えないように⾝に着けるものに注意する」「⼊浴時には体をこすりすぎないようにする」「ストレスをためないようにする」など、乾癬と上手く付き合っていただくためには、守っていただきたい生活の工夫が多々あります。

やりたいことを上手に取り入れましょう。たとえば、「甘いものは控える」ではなく「甘いものは何kcalなら食べられる」のように出来ることを見つける。 しかし、このように聞いてしまうと、「治療を始めたら、『あれもだめ』『これもだめ』と⾔われて⽣活が制限されるのではないか」と思う方も多いようです。乾癬患者さんは、疾患自体において、日常生活が制限されています。例えば、皮膚症状のために温泉に行けない。爪症状のためにネイルのおしゃれができない。関節症状からスポーツを楽しめない…。いくら疾患コントロールのためとはいえ、それ以上に⽇々の⽣活の制限が増えてしまえば、治療をつづけていくことはもちろん、夢や希望も無くなってしまいます。

乾癬の治療を始めるにあたって、「⽣活の中でどのようなことに気をつけたらよいか」についてお話ししますが、私はあまり強調しないようにしています。治療を正しくつづけていくうえで⼤切なことは、「どのようなことに気をつければよいか」を知ったうえで、できないことではなく「できること」を⾒つけていくことではないでしょうか。例えば、⽢いものが好きなら、「⽢いものはよくない」「⽢いものは控えたほうがよい」ではなく、「糖質フリーのアイスクリームを食べる」「カロリーオフの菓子パンにする」。お酒が好きなら、「飲酒はだめ」「飲酒は控えなければ」ではなく、「糖質オフのビールにする」「⽇本酒が好きだけれど、⽇本酒は1合ぐらいにして、次は焼酎のお湯割り、それも薄めにしよう」といった考え⽅です。やりたいことをあきらめるのではなく、無理をしないで⽣活の中に取り⼊れることができる具体的な習慣の変更⽅法を、医療従事者と⼀緒に考えることが重要です。

治療は見直せる

また、⼀度は納得して始めた治療であっても、治療をつづけていくうちに自分には合わないと感じることもあります。さらに、⽣活環境や状況が変わることで、治療がつづけられない場合もあります。また、薬が余っているのに⾔い出せなくて、どんどん薬がたまってしまう、というようなことも案外多く経験します。

「この薬の塗り⼼地は悪い」「仕事が忙しく、頻繁に通院することが難しい」「薬が余ってしまっている」「毎⽇つづけるのが⼤変」など、少しでも治療に対して困ったことやご意見があれば遠慮せず、皮膚科専門医にお伝えください。患者さんの⽣活の中で負担になることをできるだけ減らし、時には今の治療を⾒直すなどしながら、つづけられる治療を⼀緒に考えていくことが重要です。

乾癬治療の⽬的は、「症状を改善し、⽣活の質(Quality of Life:QOL)を⾼めること」です。症状をよりよい状態にコントロールして、乾癬やその治療が気にならない⽇常⽣活を⽬指して、ご⾃⾝ができる治療を皮膚科専門医と共に模索しましょう。

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